《メモ》 横隔膜と腹筋群

呼吸時には横隔膜と腹筋群は連動している。

横隔膜は吸気の主動作筋であり、強力な呼気の補助筋である腹筋群は力強い呼気を生み出す。これらの筋群は明らかに拮抗作用を持つが、協同的にも作用する。実際、横隔膜は腹筋群が働かないと効果的に作用しない。
-第4章 胸椎 横隔膜と腹筋群の拮抗作用(p. 144)
吸気時、横隔膜が収縮し胸郭の上下径を増加させるように腱中心を引き下げるが、すぐに縦隔洞の伸張と腹部臓器の抵抗により元に戻る。これらは、腹直筋、腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋などの強力な腹筋群による腹部帯の中に含まれている。これらの腹筋群の働きがないと、腹腔内臓器は前下方に押しやられ、横隔膜が下部肋骨を挙上させるに必要な腱中心の固定がされなくなる。よって腹筋群のこの拮抗-共同作用は、横隔膜の作用効率に欠くことのできないものである。
-第4章 胸椎 横隔膜と腹筋群の拮抗作用(p. 144)
吸気時に横隔膜は下方へ移動するが元に戻り、下位肋骨を挙上させる。この際、腹筋群が働かないと、腹腔内臓器が前下方に押し出され、横隔膜が下位肋骨を挙上させることができなくなる。
呼気時、横隔膜は弛緩し、腹筋群の働きで胸郭底を上げ、同時に胸郭の左右径と前後径を減少させる。腹腔内圧の増加によっても内臓は上方に押し上げられ腱中心は挙上される。これにより胸郭の上下系は減少し、肋骨横隔膜陥凹は閉じる。それ故、腹筋群が胸郭の3方向の直径を同時に減少させるときには、腹筋群は横隔膜の完全な拮抗筋となる。
-第4章 胸椎 横隔膜と腹筋群の拮抗作用(p. 144)
呼気時、横隔膜は弛緩し、腹筋群は収縮する。胸郭の3方向の直径が減少する。
吸気時、横隔膜の緊張は腹筋の緊張が減少している間に増加し、呼気時にはその逆となる。それゆえ、呼気と吸気において絶え間なく変化する流動的な均衡がこれら2つの筋群の間に存在する。これが、これらの筋群の拮抗-共同作用である。
-第4章 胸椎 横隔膜と腹筋群の拮抗作用(p. 144)

腹筋群が硬くなっていると、吸気時の腹筋群の緊張の減少がされないので横隔膜と腹筋群の拮抗-共同作用がアンバランスとなり、呼吸は浅くなる。



引用文献:
I.A.KAPANDJI著(萩島英夫(監訳)・嶋田智明(訳))
カパンディ 関節の生理学 Ⅲ 体幹・脊柱』(医歯薬出版、1986年)

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